かつて鯖缶は、最初に鯖を蒸煮(蒸気で加熱すること)してから缶詰にしていました。これにより工程の管理はしやすくなるのですが、せっかくの鯖の旨みの一部が外に逃げてしまいます。味の加久の屋※4では、日本で初めてこの蒸煮工程を省き、生詰めによる鯖缶製造方法を開発しました。これにより、大幅な省エネとともに、新鮮な鯖の旨みをすべて缶内に閉じ込める、缶内調理のプロセスを確立。鯖缶の美味しさを飛躍的に高めたのです。
入荷した鯖は、まず頭と内臓を取り去り、たっぷりの流水で血抜きをします。その後、一般的な鯖缶では取り除くことのないような雑味も、臭みの元と なりますので全て除去します。料亭と同じ、包丁を使った手仕事です。その後、缶のサイズの切り身にして、手詰めマイスター※5が1缶ずつ丁寧に手詰めして いきます。これは、一般の鯖缶のように機械詰めを行うと、鯖の身が崩れて食感のメリハリも見た目の美しさも失われてしまうためです。
味の加久の屋の最高級鯖缶は、脂の乗った600g以上の大鯖の中でも、いちばん美味しいハラス(鮪ならトロ)がある切り身だけを手詰めしています。この部分は、1匹の鯖から3~4切れしか取れません。脂の少ない尻尾の部分はまったく使わない、極めて贅沢な鯖料理なのです。
鯖缶は、半年以上寝かすことによって熟成が進み、さらにまろやかな旨味が増していきます。味の加久の屋の鯖缶が、ワインのように漁獲年を大きく表示した「ヴィンテージ缶」※6 になっているのはこのためです。 味の加久の屋では、1年以上缶内で熟成させた鯖缶も数量限定で出荷しています。 また、ご家庭でも常温で保存し、保存期間の長さによる味の違いをお楽しみいただくことをお勧めしています。
鯖をあらかじめ蒸煮することなく、生のまま切り身にして缶に詰めること。冷凍後解凍した鯖を詰めることも生詰めと呼んでいます。
正確には、親会社である八戸缶詰(株)が1963年に開発したものです。味の加久の屋は、八戸缶詰の缶詰等の販売部門として1981年に独立したものです。
工場の熟練したスタッフは、一瞬の判断で鯖の切身重量や含水量を見分け、品質基準に合った分量をスピーディーに缶に詰めることができます。肉の量が若干足りない場合の「差し肉」も、手詰めマイスターの仕事です。味の加久の屋の手詰めマイスターの主力は、10年以上の経験を積んだ地元の女性たちです。
ヴィンテージとは、元々はワインの製造工程を指す言葉です。ぶどうの産地が明らかなワインとその収穫年をも意味しているため、当たり年のワインのことをヴィンテージと呼ぶようになりました。味の加久の屋の八戸鯖の缶詰は、ワインと同じように品種と漁獲域を管理し、缶内熟成によって旨味を増す特徴を持っているため、ワインにならって「ヴィンテージ缶」と呼び、漁獲=生産年を明記しました。