- 2015.12.15
- <リレーコラム:1>八戸マジック(クリエイティブ・ディレクター:関橋英作)
こんにちは。いちご煮CMプロジェクトです。前回からひっそりと始められました「リレ-コラム」。
このリレーコラムでは、映像に込められた思いや、制作までの流れなど…
今回の企画や映像制作に興味ある人にとっては面白い?部分を、制作の中心に居たそれぞれの人の視点から、少しづつ明らかにしていく・・・というものです・・・。
前回のコラムでは前説として「いちご煮のCMを変えるということ」をテーマに書きましたが、今回は「その1」として・・・
私達の思いに共感してくださり、アイデアを共に考え、コンセプトからコピーまでご考案された「クリエイティブ・ディレクター」の関橋英作さんに書いていただきました。
※上写真:真ん中が関橋英作さん。関橋さんについてのご紹介は、こちらの過去記事から。
http://www.kakunoya.co.jp/ichigoni/cmpj/category/151026_231934
それではどうぞ。
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こんにちは。関橋英作です。
私が、味の加久の屋の古川さんから相談されたのは、1年半くらい前。
もう、今となっては大昔のような感覚ですが、そのときは、こんな形で実現するとは想像していませんでした。
そして、それが、八戸マジックのはじまりでした。
私は、いちご煮の故郷、青森県八戸市、小中野地区新井田川沿いで生まれ育ちました。
家も漁業をしていましたから、バリバリの湊っ子。海と魚の匂いで大きくなったのは間違いありません。
小さい頃は、ウニもアワビもまだ禁漁ではなかったので、ちょっと潜ればすぐにありつけたと記憶しています。家でも、母が時々いちご煮をつくってくれましたから、それほどの特別感はありませんでした。
なんだか、申し訳ないようですが。
長い間、広告代理店でクリエイティブ・ディレクターをしていましたから、CMは200本以上つくっているはずです。それでも、故郷のCMとなると気持ちの在り方は全然別物。いつもより肩に力が入りすぎて、出だしはぎこちなかったかもしれませんね。
食したことのある方ならご存知のように、いちご煮はとうてい北の果てのお吸い物とは思えません。
京都名物と言われても不思議はないでしょう。
サントリー山崎のコピー「何も足さない、何も引かない。」をそのままいただけるくらい、ウニとアワビの素材感を活かした料理なのですから。
これが、最初の八戸マジック。
次なるは、映像のクオリティです。
いちご煮と八戸の魅力を、やさしく、ナチュラルに、それでいて魔法をかけられる映像を作っていただける方を…。
いました!同じ大学で教えている今村直樹さん。
とても感覚を共有しやすく、いまやいちばん理解できる人かも知れません。
今村さんの映像は、その場の空気をジェントルに捉えるので、いつの間にか気持ちの中に造作なく入り込んでくる。作為が見えないように企む、本物の巨匠です。
※今村さん作品:九州パンケーキ オフコマーシャル ~Happy Pancaku篇~
そして何はともあれ、八戸へお連れしました。
いちご煮はもちろん、海の幸、米の幸(お酒です)三昧。
でも、決め手だったのは、いちご煮缶をつくる工場を見学に行ったこと。
そこで、ちょっとしたハプニングが起こったのです。
季節はちょうど秋。
当初は、いちご煮の製造を見学させて頂く予定だったのですが、とっても良いサバが揚がったというので、急遽、サバ缶づくりに変更されたのです。
※補足)「八戸鯖」という缶詰。良質なサバが水揚げされた時にのみ製造するサバ缶。
~八戸鯖特設サイト~
しかし、その行程の新鮮さ度合いに、二人とも驚愕。
ここまでこだわった製作工程を見せられて、心が決まらないはずもありません。
これこそ、霹靂の八戸マジック。
そこからは、コンセプトづくりに没頭の日々です。
頭に浮かんだのは、スープという言葉。
いちご煮を表すとき、潮汁とか、ウニとアワビのお吸い物などが使われます。
それはそうですが、なんとも即物的な感じが否めません。
それにひきかえ、スープは世界中で人類と共に存在してきました。
あらゆるものを寛容に受け止め昇華させる。薬としての顔も持つほどです。
次に降りてきた言葉が、海の神さま。
岬は、海からやってくる神さまを迎える場所。八戸は、広い太平洋を受け止める形の形状になっています。
このふたつを合わせると、「海のスープ」というコピーが自然に紙の上に現れました。
あとは、コピーとしてブラッシュアップするだけ。
このコンセプトを今村さんに話すと、スッと受け止めていただいたのを覚えています。
まさに、海の八戸マジック。
こうして、次は今村さんのコンテへと移っていきました。
<完成版CM~海の恵みのスープ篇~60秒アカペラバージョン>
あらためて思うことですが、八戸という土地はとても不可思議なところ。
東北なのに開放的、北国なのに情熱的、街なのに神秘的。
だからこそ、いちご煮が生まれたのでしょう。これは確信に近い。
でなければ、超一流スタッフの心をあっという間につかめるはずもありません。
いちご煮には、その八戸マジックがゆらゆらしています。できあがった映像も音楽もまた、八戸マジック。
八戸人として、誇りです。
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如何でしたでしょうか?
次回の「リレーコラム」もどうぞお楽しみに!